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オーギュスト・ロダン バルザック記念像 1891-98年

19世紀のフランスの文豪バルザックを表わすこの像は、オーギュスト・ロダンが制作したものです。人間の生命や激情を、動きのある肉体に表現したロダンは、近代彫刻への道を開きました。バルザックは、偽善的な社会に生きる人間の苦悩を容赦なく書き表わした作家です。像の制作を依頼されたロダンは、バルザックの精神を表現しようと、肖像写真をもとに試行錯誤を重ねます。そして、ガウンをまとい、夜中に書斎を歩き廻りながら小説の構想にふける姿にたどりついたのです。作品を、横からもご覧ください。巨大な体は、後ろに反り返り、深くえぐれた目で、遠く宙をにらんでいるのがよくわかります。ガウンをまとうことで、よけいな細部が覆い隠され苦悩する内面と強い生命力が感じられます。あまりに革新的なこの作品は、当時は理解されず、雪だるまなどといわれ、注文主の文芸家協会から引き取りを拒否されます。この像が、パリで公開されたのは、ロダンが亡くなって22年後のことでした。