フランソワ=ザビエ、クロード・ラランヌ 嘆きの天使 1986年
「ある日、美青年ナルシスは泉の水面に映る自分の姿に、そうとは知らず恋をしてしまいます。報われぬ恋にやつれはて、やがて息絶えたナルシスは、水仙に生まれ変わり可憐な花をひっそりと咲かせました。」ギリシャ神話のナルシスのように、水面に映る自分の顔に頬を寄せる天使。水面の恋人は言葉を返すこともなく、流れ落ちる涙はその姿を掻き消してしまいます。しかし、かなわぬ恋を嘆きながらもその顔は、どこか微笑んでいるようにも見えますね。作者のラランヌ夫妻は、2008年に夫のフランソワ=ザビエが亡くなるまで、「芸術は、生活の中になければならない」という理念のもと、動物の形をした家具などの様々な分野の作品を長い間共同で生み出してきました。水を使ったこの作品では、白く冷たい輝きを放つ石の顔と植物をモティーフにした髪のコントラストが、恋の陶酔の世界を一層際立たせています。