うねるような姿が疾走する人体の躍動感を伝え、残像に形を与えることで時間の経過を表わした。運動や周囲の空間との関係、時間の感覚などを同時に表現する、「未来派」彫刻の頂点である。

モデルとの間には、作家にとって越えがたいと感じられる距離があり、その距離に隔てられるとモデルは痩せ細って見える。間に「見えるもの」の正確な再現を追求した結果、指の跡も生々しい突き詰めた人間表現となった。

最初に対象を再現的に素描し、形態を単純化していって、最後に幾何学的な図形に置き換えるという制作を行った。空間までも彫刻の構成要素と考え、量感を持たない「材質と空間の結合」を目指した。

「接吻」を主題にした石彫は6点あり、その第1作（1907−08年、クラヨーヴァ美術館、ルーマニア）から型取られた石膏像。抱き合う男女の姿は、四角いかたまりに還元され、ふたつにしてひとつという愛の形の核心を衝いている。

ブランクーシから石の直彫りを指導され、アフリカの部族彫刻の力強さに影響を受けた頭部やカリアティード（女人像柱）を制作した。もともと石に彫られたこの作品は、柱になった古代の神のように超然としている。

スカートの裾がひるがえる様子や手足の動きなど、軌道を線で描くことで速度と運動をとらえている。「バル・ティク・タク」は、1921年にローマで開かれた未来派スタイルのダンスホールで、バッラが内装を手掛けた。

穏やかで自制的な印象を抱かせる古典性と、憂愁を内に秘めた現代的感性が融合する静謐な人間像を追求した。アッシアというモデルは、作家が探し求めていた要素（美、古典性、現代性）を完璧に兼ね備えていたという。

この作品は、窮乏によって体を壊し、ひと月ほど病院で過ごした時の観察をもとに作られた。眠っている老人と肘掛椅子と床とが織りなす空間と物体の結合が、小さな塊の中から現れる様は素描のようである。

制作した作品の数は少なく、現存する彫刻は40作に満たない。子供や老人、女性など市井の人々を題材に、日常のなにげない情景や、その一瞬の表情をスケッチするように引き出した。

「自然には境界がないのだから、芸術作品にも境界があってはならない。私が肖像彫刻を作る時、それを顔の輪郭線だけに限ってしまうわけにはいかない。その顔は身体に続いているものだし、さらに、その顔に影響を及ぼす周囲の中に置かれている」と語り、彫刻に印象主義的な手法を取り入れた。

網を引くイタリア人がモデル。奔放な肉付けの緊張感と生命力にあふれた造形はオーギュスト・ロダン［1840−1917］の影響を示し、当時の日本の彫刻界に多くの刺激を与え、日本近代彫刻の先達となった。

モデルのボースは、インドから体育の勉強に来日していた青年。左右対称で端正なポーズから、若者の健康的な精神と肉体の高揚を感じる。藤川は、晩年のロダンのアトリエの助手を務めた、日本人では唯一の直弟子であった。

肖像彫刻の名手といわれ、その観察眼と造形力は動物彫刻にも発揮された。猫像は、猫好きであった朝倉のそばで、気ままに過ごしていた中での一瞬をそのまま写し取られたかのようである。

繊細な陰影の表現が特徴的。顔の細部は省略されて表情は定かでないが、かえって深い情感を漂わせている。若い女性像を題材にしたものが多く、病弱であったためかそのほとんどは小品である。