キャンヴァスを張った帆がふたつ、風まかせに向きを変えながら、上下にうなずき合うような動きを見せる。流線形の形状は風の流れや抵抗が綿密に計算され、どんな風も逃すことはない。微風の時もゆっくり穏やかに、決して止まることなく動き続けている。作品は風と一体になって初めて生命が宿ったように、生き生きとした表情を見せる。新宮は、「草木が風になびくように、自然のリズムを素直に感じる鋭く豊かな感受性を身につけ、あらゆる変化に対応できるしなやかな強さを養うことが人間には必要である」という。東京藝術大学を卒業後、渡伊。ローマ国立美術学校で絵画を学ぶ。1966年、ミラノで初めて立体作品を発表。以来、風や水の流れなど、目に見えない自然のリズムを様々な動きに翻訳し、休みなく語りかけてくるキネティック・アートを作り続けている。