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ジュリアーノ・ヴァンジ 偉大なる物語 2004年

真っ白な大理石の塊から、様々な人間の姿が浮かび上がっています。作者のジュリアーノ・ヴァンジによれば、この作品は、人間の存在とその意味、とりわけ、男の人生を表わしています。目の前で、膝をかかえているのは、洞窟にかがむ古代の男。男の背後には、記憶のなかの女性の顔が、風のようなシルエットを見せています。向かって左へと進み、作品の周りを時計まわりに見て見ましょう。若いオリーヴの木が、青々とした葉を茂らせています。その横には、人生の入り口が開いていますが、先に行くにつれ、だんだん狭くなっているのがわかります。これは、人生の苦労を表わしています。飛び石をつたって、左側にまわりましょう。樫の古木が大きく枝を伸ばし、愛し合うカップルの顔を豊かな葉でやさしく撫でています。人間と自然が共に生きることの大切さを表わしているのでしょう。その先には、顔をあげる男の姿があります。苦難にあっても、現代の男は、希望をもって前進してゆくのです。イタリアの巨匠―ヴァンジは、苦しみに満ちた閉塞した社会の中でも、なお存在してゆく人間の威厳やその孤独を表現してきた作家です。作品に登場するのは、みな平凡な人間ですが、不安、苦悩、心配、おごり、悪徳とともにありながら、なお存在する人間の威厳、それゆえの美しさを訴えかけてきます。