ヘンリー・ムーア 横たわる像:アーチ状の足 1969-70年
広い大地の上に、堂々と横たわる褐色の彫刻。一見、抽象彫刻のようですが、横から眺めてみれば、丸みを帯びた有機的な形態は、横たわる人間の姿のように見えます。イギリスに生まれたヘンリー・ムーアは、20世紀を代表する彫刻家の一人です。「彫刻の基本は人体である」と考えていたムーアにとって、「横たわる像」は、生涯を通じて追求した重要なモティーフのひとつです。背筋を伸ばした胴体と、弧を描く長い脚は、見る位置により変化に富んだ新しい形を生み出していきます。「私にとって、その最良の背景となって彫刻を完成してくれるのは、自然である。」広大な自然のもと太陽の光を受けて、堂々と横たわるこの作品は、現代に生きる人間の生命の神秘を浮かび上がらせます。