展示構成

 本展は、彫刻家・井上武吉(1930-1997)が設計した彫刻の森美術館本館ギャラリーを会場として開催されています。

 本館ギャラリー1階で真っ先に目に入ってくるのは、《交叉の泉》(2002年)の原寸大の写真パネルです。横尾忠則は“ローマのトレヴィの泉の東京版”を依頼され、イタリアの映画監督フェリーニへのオマージュともいえる1/10の模型を制作しました。構想を練るために描いたドローイング14点は、今回、初めて発表されたものです。1階奥に展示されている絵画《実験報告》(1996年)に描かれた光景は、《交叉の泉》の背後の洞窟や彫刻《Experimental Report》(2008年)の小さな洞窟にも反映されています。

 本館ギャラリー中2階には、アングル《泉》と小便小僧を横尾流に組み合わせた陶板と彫刻、デルヴォー《こだま》をモティーフにした連作絵画が展示され、ひとつの主題の反復と探求を見ることができます。

本館ギャラリー2階への階段を上がると、ダ・ヴィンチとデュシャンを主題にした「ピンク・ガールズ」シリーズの《モナリザとタトゥー》が出迎えてくれます。黄色、緑色、ピンク色の壁は、この会場のY字路。ピカソ、デ・キリコ、ピカビア、フラ・アンジェリコ、ルーベンス、ベラスケス、ミレー、マグリット、ルソーなどの芸術家やその作品が主題となった絵画22点が一堂に展示され、横尾忠則と巨匠たちとの交信を感じることができる空間です。ダンカン撮影のピカソのドキュメント写真からは、インスピレーション源が分かります。

撮影:木奥恵三

彫刻の森美術館と箱根を主題とした新作《At Box Roots》

 本展のために制作された縦181.7cm、横227.5cmの大作。複数の箱根の三叉路のイメージを組み合わせた架空のY字路に、彫刻の森美術館コレクションの彫刻7点がピカソ館とともに配置されている。横尾忠則が「観光っぽい絵を描いてみようと思った」と語っているように、芦ノ湖と遊覧船、大湧谷と箱根ロープウェイといった箱根を象徴する場所も描き込まれている。
 昨年秋から悩まされている突発性難聴を暗示する《耳》。昨年末に右足を骨折した後、リハビリ中に履いていた医療用スリッパの下には450(ヨコオ)のサイン。横尾自身の日記でもある。ブラックホールのような左上の黒い■は、謎を残す。

PUZZLE GAME

7つの写真を正しい場所に動かして《At Box Roots》を完成させよう!

《At Box Roots》 2016年 キャンヴァスに油彩 彫刻の森美術館蔵  撮影:木奥惠三

“走るアート” 《CAR-leidoscope》

 横尾忠則の数々の絵画を生み出した、紙皿を使った絵画パレット。1枚のパレットからひとつの作品が創出される。一見、抽象絵画を思わせるパレットは、横尾の作品と表裏一体だ。
 横尾は直感的に位置を決めて絵具を絞り出し、色を混ぜ合わす。それは肉体が無意識に作り上げる色と形であり、美学的な意識は介在しない。直感と理性のバランスをとりながら制作する絵画ではなく、“感応するアート”であろう。
 横尾は、パレットを“作品”と捉えていて、数十年間におよぶ創作活動で使った数百点分を大切に保管している。展覧会ではこのパレット自体も展示する。
 今回はそのパレットを用いた集大成であり、自動車をベースにした初めての作品だ。膨大な数のパレットに出会うことで、見る者はこれから生まれる無数の物語を見出すだろう。“走るアート”の登場である。

《CAR-leidoscope》2016年
<デザインのもとになった絵画パレット>

横尾忠則 × smart アートカー チャリティオークション 10/29に開催
アートカー《CAR ‒ leidoscope》をチャリティーオークションに出品します。 なお、収益金は交通遺児育英団体に寄付されます。


 横尾忠則さんの数々の絵画を生み出した、紙皿を使った絵画パレット。3月4日(金)、その絵画パレットから生まれた横尾さんデザインによるsmartアートカーのプレス発表レセプションが、彫刻の森美術館での展覧会「横尾忠則 迷画感応術」に先立ち、東京六本木のメルセデス・ベンツ コネクションにて開催されました。
 レセプションには、森英恵館長や特別協賛のメルセデス・ベンツ日本の上野金太郎社長、横尾さんのご挨拶もあり、200人を超える出席者に見守られながら、横尾さんは完成したばかりのアートカーにサインを入れました。
 アートカーは、メルセデス・ベンツ コネクションに3月7日(月)から3月13日(日)まで展示され、現在は会期終了の8月28日(日)まで当館本館ギャラリーテラスに展示されています。