彫刻の森美術館

彫刻と芝生の休憩エリア
「ポケっと。」

彫刻と芝生の休憩エリア
「ポケっと。」

2021年4月、彫刻の森美術館に体験型作品を中心に休憩できるエリア「ポケっと。」がオープンしました。

美術館入ってすぐに目に飛び込んでくる大きなブールデル作品の壁面裏側に、地形の高低差でできた秘密基地のような空間が広がります。
そこにはからだを使ったり写真を撮ったり、風が奏でる音に耳をすませ、こどもからオトナまでが体感しながら楽しめる色彩に溢れた作品を展示。さらに、このエリアの特徴でもある芝生面にも色どり豊かなソファを設置し、来館者にくつろぎの時間を提供します。
頭上に広がる青空や箱根の眺望を、アートに包まれたポケットでぽけ~っとお過ごしください。

エリア名:
ポケっと。(日) PockeT. (英)
オープン日:
2021年4月29日(木)
展示作品:
松原成夫《宇宙的色彩空間》
イサムノグチ《オクテトラ》
松本秋則《風の奏でる音楽》
ランドスケープデザイン:
ARIWRKS
ファニチャー製作:
株式会社SIXINCH.ジャパン
エリアネーミング・ロゴデザイン:
高村佳典(CRAFTIVE)


展示作品紹介

イサム・ノグチ《オクテトラ》
アメリカの彫刻家イサム・ノグチは、日常の遊び場にアートを持ち込み、こどもたちに夢を与えるために数多くのプレイスカルプチャー(遊べる彫刻)を制作しました。

《オクテトラ》は、イサム・ノグチが制作したプレイスカルチャーで最も知られたものです。ギリシャ語の8=オクトと4=テトラを組み合わせて《オクテトラ》と名付けられたこの作品は、六角形の面4つと三角形の面4つをあわせた八面体の彫刻で、中に入って登ったり、くぐったりすることができます。

松原成夫《宇宙的色彩空間》
松原は、「物体を並列させることで空間がつながり、屋外の自然と融合して秩序のある宇宙空間が生まれる」と語ります。この作品では同じ大きさの正方形を1列に並べ、赤、黄、緑、青と虹色に移り変わる色をつけました。12色の変化がリズムとハーモニーを生み出して、まるで音でも聞こえてきそうな色彩の小宇宙を作っています。正方形の枠の連続が作り出している空間は開放的で、見る人を思わず作品の中へと引き込んでいくようです。

子供たちだけでなく、大人までが枠をくぐり抜けてみたくなるこの作品は、人々の気持ちを和ませる環境彫刻として、また作家の造形の意図を越えて、遊具造形としての役割も果たしています。

松本秋則《風の奏でる音楽》
風が吹くと頭上よりずっと高いところから、カランカランという素朴な音が聞こえてきます。見上げると、周りの木立と背を並べるようにして、たくさんのパイプが風に揺れています。風に揺れて生み出される音は、自然が奏でるリズム。長さに違いのあるアルミニウム製のパイプは、音に高低があり、音楽を生み出します。例えば微風の時は、まるで風のささやきのような優しい音楽を奏でます。独学で美術・音楽などを学びました。

「私は音楽が好き。でもピアノやギターなどの既成の楽器を演奏することはできない。そんな私が音楽活動をするにはどうしたら良いかと試行錯誤した結果、生み出されたのがサウンド・オブジェたち」と語ります。
1992年から1年半アジア7 カ国で少数民族の芸能を研究。近年は竹を素材にしたサウンド・オブジェを制作し、アジアの芸能をヒントにした影絵仕立てのサウンド・インスタレーションで発表を続けています。


エリアコンセプト

本計画地は、彫刻の森美術館の敷地の高低差によってできた地盤のちょうど中段に位置し、上下の地盤にある他のエリアと視覚的に隔てられています。

高低差をつなぐ荒いコンクリートの擁壁と傾斜した大きな芝生面を背にすると、相模湾へと続く木々や山、大きな空が目の前に広がります。この他のエリアと隔てられた自然の中に、座り、寝ころび、休憩できる色とりどりで様々な形の屋外家具と、触り、登り、体験できる色彩豊かな彫刻作品を配することで、新たな風景を出現させました。

自由に滞在できるよう、大きな芝生の斜面や彫刻作品のまわりに、様々な形のベッドやベンチを配置し、さらに、ワークショップや企画展の際には、ウッドデッキは舞台や展示スペースとなり、斜面や屋外家具が客席となります。体験できる彫刻作品のまわりには、ゴムチップとバークチップで円形状の柔らかい床を作り、大きな屋外家具のまわりにはウッドデッキで円形状の床を作りました。

これらの様々な素材、大きさ、形の円を繋げたり、離したりすることで、空間に表情と動きを生むことを意図しています。

(ARIWRKS)


ネーミングコンセプト

「ポケっと。」には2つの意味がこめられています。
入り口から円形広場を抜け、奥の一段下がったエリアと接続する斜面、という立地は、彫刻の森美術館の「ポケット」のような存在である、ということ。そして、屋外回遊型のゾーニングが多い中で、とどまって思い思いに「ぽけっと。」した時間をすごすことができる、ということ。
そこを使う人たちの、それぞれの「ポケっと。」ができれば、と考えています。

高村佳典(CRAFTIVE)